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一流のフライ・フィッシャーマン ~Jeepで渓流へ~


3月1日は渓流の解禁日だ。それ以降、最初の週末にあたる今回、フライ・フィッシングの達人であるマニアAと、初心者のアッキーラと、渓流へ向かった。
アッキーラは、一ヶ月前に納車されたばかりのJeep Wrangler Unlimited‎に乗って登場してきた。色は、Wild Lifeメンバーからオフィシャルカラーの“白”を選択するよう圧力をかけられ、一番年下のアッキーラはそれに従わざるを得なかった。集合場所からは、皆でWranglerに乗り込み渓流へと向かった。

Jeepはアメリカのメーカーであり、昔の固定観念から、品質は低く、乗り心地も悪いと考えていたが、全くそんなことはない。こうなってくると、日本車にはない“遊び心”が満載で、その上、最近の自動車が失ってしまった無骨さを残した美しいデザインは、我々の趣向にとても適合した車と言えるだろう。白い車体は、その無骨さを強調し、我々の愛する自然にとても映えていた。クソボロのTOYOTA Hilux Surfに乗っていたアッキーラであったが、ワンランクアップしてしまった。

渓流のフライ・フィッシングは、昨年の夏以来だ。谷に流れる澄んだ水、澄んだ空気、緑豊かな木々に覆われ、その隙間から蒼い空が覗き、木漏れ日が差す。そんな環境で釣りを楽しめる悦びは何度来ても褪せることはなく、いつ来ても幸せを感じる。
改めて考えると、これも、全てマニアAのおかげである。マニアAは、一人でフライ・フィッシングを始め、挫折することなく一人で技術を磨き、一人で釣り場を開拓し、今となっては、その腕前は超一流である。俺も若かりし頃、一旦フライ・フィッシングの世界に憧れ一人寂しくチャレンジしたものの、技術向上や釣り場探し等あらゆる面で苦労し、結果、断念していた。しかし、マニアAと出会い、色々な事を教わり、常に傍でその技術を目の当たりにできたおかげで、随分と技術も向上し、フライ・フィッシングを心から愉しいと感じるようになれた。

そしてこの日も、マニアAは、初心者であるアッキーラに、立ち位置、魚が居るポイント、フライを落とすポイントや投げ方など、熱心に指導していた。このような、技術の高さや知識の豊富さだけではなく、自らの釣欲よりも、仲間が楽しくフライ・フィッシングができる事を優先するその姿に、一流のフライ・フィッシャーマンとしての“格”を感じさせるのだ。
三人で順次、渓相の良いポイントを攻めながら、源流へと遡上していく。俺は、運よく、今シーズン最初となる一尾を釣り上げた。そして間もなく、アッキーラも人生初となるゴギ(イワナの一種)を釣り上げた。これも全て、一流のフライ・フィッシャーマンである、マニアAのおかげである。

しかし、マニアAに釣果がない。もちろん、一流の技術を持ち合わせている事は十分に知っているし、やはり釣りには“運”も関係する。そもそも、この日は魚の活性自体が低い日でもある。なので、誰もマニアAを責めてはいないのだが、何故か、マニアAは「俺は今日、ガイドに徹しとるからな。」と言い訳を始めた。確かに、所々でご指導を賜ってはいるが、三人で平等にポイントを攻めているし、真剣にロッドを振るその後ろ姿からは、とてもガイドに“徹している”感じは受けなかったのだが。

その上、言わなければいいのに「俺にとって、アッキーラが初めての一本を釣ったことが、とても喜ばしいことだ。」と心のこもっていない薄っぺらな発言まで付け加えた。なおかつ「自分は釣れなくても、皆が釣れることが俺の幸せだ。」とも言っていたが、魚の活性が低い状況に対応するため、自分だけ、しかもこっそりと、フライのサイズを小さいものに交換していたことを俺は知っている。
だが、決してマニアAの人間性を疑っている訳ではない。マニアAは、尊敬すべき人間性を伴ったはずの、一流のフライ・フィッシャーマンなのだから。
その後も魚は釣れない。やはり日が悪かったのだろう。そして夕方も迫り、もう我々に残された時間が少なくなってきたその時、マニアAは、聞いてもないのに、唐突にボソッとこんなことを言った。「俺、今日、本当は2本釣れとったんよ。足元まで来たけどバレたんよね。結構ええサイズじゃったんよ。」と。我々はその釣れたという瞬間を見てはいないが、一流のフライ・フィッシャーマンが言うのだから、多分、嘘ではないだろう。
しかし、我々のたった一尾に対抗しようとするその発言に、器の小ささを感じなくもないが、それでも、決してマニアAの人間性を疑っている訳ではない。マニアAは、破格の人間性を伴った一流のフライ・フィッシャーマンなのだから。

ところで、自然豊かな渓流はツキノワグマの生息地でもあり、近年、釣り人が襲われる事故も少なくはない。これに対するマニアAの対策は万全である。まずは、高品質で響きの良いクマよけの鈴でクマとの遭遇を避け、不運にも遭遇してしまった場合のためにクマ撃退スプレーを携行し、その上でやむを得ず接近戦となった場合にはナイフで戦えるように備えている。本人曰く“これも皆の安全を思ってのこと”とのことであり、おかげで我々も安心できる。流石は一流のフライ・フィッシャーマンだ。自分のみならず周囲の安全にまで最大の配慮を欠かさない。やはり、我々とは“格”が違うのだ。
結局この日は、それ以上の魚が釣れることもなく、後ろ髪を引かれる思いではあるが、源流を後にすることにした。帰りは、渓流沿いの細い山道を歩いて下山する。こんな時、マニアAは、必ず、例外なく、先頭を譲ってくれる。俺は、その理由を知っている。それはクマと遭遇した時に、まず先頭を歩く俺を生贄にして、自分は助かろうと考えているのだ。

いや、決してマニアAの人間性を疑っている訳ではない。言動が一致していないと思っているとは言わない。マニアAは、おそらく、人間性も伴った一流のフライ・フィッシャーマンであるはずだから。



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