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爆釣(カヤックフィッシング)

いよいよ大潮の週末がやってきた。
大潮は潮が動くため魚の活性が上がり、釣れやすくなるのだ。
早朝から三人で海へカヤックを漕ぎ出し、早速マニアBが立派なマゴチを釣りあげた。
そこからは、スズキ、キジハタ、ブリ(の子ども)、鯛、エソ、カサゴと、いろいろな魚種を三人で釣り上げた。
そんな爆釣モードの途中の出来事である。
釣り針が海底に引っ掛かったので、”あーあ。”と思いながら引っ張っていると、どうも引っ張り返されているような感じがした。”もしかして何か喰いついているのかな?”と強めに引くと、ほんの少しだけ浮いた。そして確信に変わった。「何か喰っとるぞ!」
その瞬間、その”何か”が移動し始め、ドラグ(ある程度の力がかかると釣り糸が切れないようにリールが逆に回る機構のこと)がゆっくりと出始めた。まるで戦車が移動するように、ゆっくりとではあるがものすごい力で引っ張り続ける。
しばらく辛抱していると、ヤツは止まった。
”今だっ”と思い、竿を立てながらヤツを引き寄せようとしたが、全く動かない。竿を立てた分ドラグが出るだけだ。
そうこうしていると、ヤツが再び動き始める。ただただ引っ張られる竿をしっかりと持ち、ゆっくりと逆回転し続けるリールを見つめることしかできない。そしてヤツが止まると、ヤツを引き上げる努力をしてみるがやっぱり微動だにしない。
”一体ヤツは何者なのだ?正体を見てみたい。”と思いながら、そんなことを繰り返していたが、この状態で一体何分が経過したのだろう。もう腕もプルプルで息も上がりつつある。
”こんなことを繰り返していても埒が明かない!”と思いリールのドラグを可能な限り固く調整し、勝負をかけたが、状況は一向に変わらない。ドラグが固くなった分、自分にかかる負荷が増してしまっただけだった。
”絶対負けんぞ!”と思いながら「どりゃーーー!」と引き寄せた時、プツンっ と切れた。
悔しい想いと、辛い時間が終わったことの喜びとで複雑な気持ちになりながら、竿を放り出し、しばらくカヤック上で放心状態となった。
しかし、この日はとても楽しかった。おそらく、今までの釣り人生で最も楽しいと感じた一日だったと思う。40代になってこんな感覚になれることは幸せなことである。
帰りのクーラーボックスの中にはまるで魚屋に並んでるような魚が入っていて、とても嬉しかったです。と小学生の日記ように締めてみよう。


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