マニアAと出会って、初めてカングーという車の存在を知ったが、日本国内でもこの車の愛好家は少なくなく、カングーオーナー達による“カングージャンボリー”なるイベントが毎年行われているほどで、この愛好家達の多くは、やはりアウトドア好きのようだ。
マニアAはカングーを買う一つの条件に「収納可能な車載ベッドの搭載」を望んでいたが、市販のベッドは高価である事が課題となっていた。それに対し我々が「そんなの作ればいいじゃん!」と言うと「えっ?作れるの?」と。
後から分かったが、マニアAは自分でフライ(毛針)を作ることは出来るが、木工や鉄工等の工作が極端に苦手なようだ。はっきり言うと不器用である。マニアAはベッドを「作ってくれる?」と聞くので「もちろん!」と答えた。
この事がマニアAのカングー購入の意志を決定付けたかどうかは分からないが、今まで何を買うか悩み続けていたのに、あっと言う間に契約し、あっと言う間に納車の日を迎えた。
ベッド設計
マニアAとの約束を果たすため、まずは設計から始める。設計と言っても図面の書き方なんて知らないので、それっぽくMicrosoftのWordで書いた。
材料のメインには、ユキ技研株式会社さんのLECOFRAMEを採用した。LECOFRAMEの採用理由は、個人でも買えて、0.1mm単位の長さで発注出来て、組み立てが簡単で、出来上がりが美しいからだ。
頭の中で描いた構造を頼りに実車を計測し、図面を書き、再び実車を計測しては、図面を書く。そうして固まって来たアイデアを頭の中で検証しては修正を加え、実車を見て確認する、といった作業を繰り返した。
材料を買うのはもちろんマニアAである。設計を間違えると余計な出費を嵩ませてしまうため、大雑把な俺だが慎重に慎重を期したことから、設計の完成までには約一週間を要した。
毎日、仕事が終わるとマニアAの家に集合し、3時間程度作業するといった具合だが、まるで中学生の放課後のような感覚だ。これを二人で3日間繰り返し、延作業時間としては約20時間。
二人の作業分担としては、マニアAに「ここの部分、設計図どおりにやっといて下さい!」とがっつりお願いしてみるも、急にもの凄く不安な表情となり、瞬時にうつ病になってしまいそうになったので、マニアAは簡単な作業、その他は俺の作業となった。
日に日にベッドが形になってくると、設計に誤りがなかったことを一つ一つ確認出来、安堵の気持ちで満たされてくる。
完成
大変お待たせしました。皆さんお待ちかねの自画自賛を始めます。
まずは、収納した状態から解説しよう。カングーのラゲッジルームにすっきりと収まったベッドキット。必要最小限の強度とし、機能性の効率化を突き詰めた事から、ゴテゴテせず、自己主張し過ぎていない。表面に採用した黒いパンチングのアルカンターラ(東レの高級人工スウェード)が、カングーの内装との一体感を醸し出し、まるでディーラーオプションではないかと思わせる。
続いて、ベッドのセッティングだが、まず、セカンドシートを倒し、その上にラゲッジルームに設置した下段のキットからフレームをスライドして引き出し、そのフレームの上にラゲッジルーム上段に置いてあるパネル2枚を並べるだけの簡単な作業でベッドとして使用できる。
パネル2枚は、ただ並べただけでは安定感がまるでないので、置いてスライドさせると、フレームにしっかり固定できる構造にしてある。この事で、パネルの端に体重をかけても反対側が浮き上がる事も無く、縦横方向にズレることも無い。
続いて、ベッドのセッティングだが、まず、セカンドシートを倒し、その上にラゲッジルームに設置した下段のキットからフレームをスライドして引き出し、そのフレームの上にラゲッジルーム上段に置いてあるパネル2枚を並べるだけの簡単な作業でベッドとして使用できる。
実際に寝転がってみると、採用したクッション材も、硬過ぎず、柔らか過ぎず、沈み込み過ぎず、絶妙で心地よい。その上、アルカンターラの肌触りも最高だ。
なお、クッション材の厚みや柔らかさは、ラゲッジルームで荷物を置く時にも、荷物が沈み込んで扱いにくくならないことも計算の上だ。
こんなにグレートな車載ベッドだが、材料費は3万数千円ほど。市販のベッドより10万円も安いが、もしかしたら、市販品より満足度は高いかもしれない。
作り終えて
完成後、マニアAは早速、家族三人で寝転がってみたそうだが、大人二人と子供一人が寝ても、強度に不安は無かったとのこと。家族もみんな喜んでくれたらしい。
今回、マニアAにベッドキット作成の機会を与えてもらったが、頭の中のアイデアを形にして行く作業の愉しさを改めて感じた。この愉しさはホームページの作成等でも感じるが、やはり、目の前で形ある物が出来上がって行く事の方がより愉しい。そして何より、目の前の人が喜んでくれる事が。
このページの掲載情報に基づき読者等が車載ベッドを作成した場合に発生するいかなる損害もこのサイトの筆者は一切の責任を負わない。
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