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自転車ジオツアー ~龍が通った道~



萩市では日本ジオパークの認定を目指している。一体どんなものか、その中でのおすすめジオツアーである”龍が通った道”へ自転車で向かった。
”流が通った道”とは、40万年前に阿武町の東端にある伊良尾山が勢い良く噴火し、その時に大量の溶岩が田万川町へ向かって14km流れ出た、そのルートを地元で語り継がれている龍神伝説からそう呼ばれているようである。
まずは、伊良尾山へ向かう。前日の天気予報では晴れだったが、朝から曇っていて、時折雨が降る。自転車で移動するには暑くも無く、寒くも無く、ちょうど良い。
同級生のゴッツと、久しぶりのロングライドであり、若くもないし、無理せずゆっくり行って、帰りは山陰線に乗って帰ろうと決めていた。よって、お気楽な旅なのだ。
伊良尾山へ向かうまで、いくつか辛い上り坂もあったが、ゆっくりと登り、昼前には国道315号線にぶつかり、目の前には伊良尾山が現れた。伊良尾山は、特に迫力も無く、あまり火山らしくはない。
ここから、伊良尾山の裏側へ続く広域農道を通れば、そこに火山灰層観察施設があるとのことなので、そこへ向かう。
広域農道は建設中であり、途中で行き止まりとなったが、そこに火山灰層観察施設があった。
”なるほど、層が見える。”と思ったが、それ以上でもそれ以下でもなかった。ジオマニアには堪らないのだろうか?
さて、ここからは、弥富地区の中心部へ向かい、龍が通った道沿いに点在する”畳ヶ淵”、”猿屋の滝”、”龍鱗郷”を見学する予定であるが、広域農道は行き止まりであり、来た道を戻らなければいけない。
だが、行き止まりの脇にコンクリートの階段があり、谷へ降りて行けるようになっていた。この谷を行けるのであれば、相当な近道である。早速、国土地理院の地図を確認すると、この谷をしばらく行けば、登山道のような道に繋がりそうである。
しかし、過去の経験から、国土地理院の地図上に表示されるそのような道は、時代の流れとともに人が通らなくなり山に返っていることが多い。もしそうであれば、藪の中を進むこととなるが、体一つならともかく、自転車を携えての藪こぎは相当な困難が想像される。
しばらく進んでみると、コンクリートの階段は終り、目の前には藪が現れ、道らしきものは確認できなくなった。
”やはりそうか。”とも思ったが、その反面、”進んでみたい。”という思いが湧きあがってくる。悪い癖だ。もう、この時点で俺の心に”引き返す”という選択肢は無かった。
道が無いので、谷沿いに進む。倒れた竹や木、茂った草、低木や蔓が行く手を阻む。元々藪の中に入る予定は無かったので、半袖、半ズボンであり、枝に引っかかれて痛いし傷だらけになる。
藪の繁茂状態は想像を超えるものであり、場所によってはどうすればこの先に進めるのかと考えながらルートを決めなければいけない。そして、無理やり人と自転車が進めるスペースを作り何とか進んで行く。ゆっくり考えていると無数のブトが体にたかってくる。マムシ、ヒル、マダニ等にやられてしまう危険性も無くはない。
とても大きなストレスがかかってくるが、同時にこの状況を打破しなければとワクワクもしている。
谷の底には小さな川が流れている。当初はなるべく靴を濡らさないようにと考えていたが、途中から、川の中を進むことが効率的であると判断し、小川に入った。
川の底は粘土質の土が堆積しており、場所によっては歩くと膝まで埋まる。水は一瞬にして一切の透明感のない茶色の泥水となる。
このような環境は映画ランボーを思い起こさせる。当にジャングルの行軍である。
”一体、この状況はいつまで続くのだろうか?”そう思い始めてからしばらく経つ。
そして、いよいよ藪の向こうに、僅かな隙間から人工物である電柱のような物が見えた。興奮しながら近付いて行くとやはり電柱だ!人里は近い!
電柱の傍まで行くと、そこは一気に開け、道があった!我々は「よっしゃ~っ!」と喜びの雄叫びを上げた。
ここからは、快適な道を進みながら、目的のポイントをこなして行き、”龍鱗郷”だけは発見できなかったものの、ほぼ予定どおりのジオツアーを終了した。
違う意味でジオを体感、満喫した達成感のあるジオツアーだった。





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