今シーズンに入り、三度目の源流釣行。マニアAと二人での釣行である。
過去二回は、渓流沿いに雪が残り気温も低く、対象魚のゴギ(イワナの一種)のエサとなる虫もほとんど飛んでいないためか、魚の活性が低く、ほとんど釣果はなかった。
午前10時頃から釣りを始めたが、この日も反応が悪い。川を遡上しながら、渓相の良いポイントを攻めるが、一向に釣れない。小さなゴギが一匹釣れただけで、そのまま昼を迎え、昼食休憩をとった。
しかし、この頃から虫が飛び始めていた。この虫は、水中で暮らしていた幼虫が、水の中から飛び立ち、成虫となるのだ。この瞬間を迎えると、魚は水面に意識が向かい、我々が愛して止まないドライフライ(水に浮く毛バリ)に反応してくる可能性が高まってくるのだ!
だが、一つだけ問題がある。それは、今から遡上していく上流域は、過去にあまり釣果の実績がないのだ。このまま上流域へ向かうのか、一気に下流域へ下るのか、マニアAと議論した末、実績の少ない上流域へチャレンジすることにした。
不安を抱えたままではあったが、いざ上流域へ行くと、午前中の釣果不振が嘘のように、そして面白いように釣れ出した。
だが、まだ問題が残っている。それは、マニアAが釣り上げるゴギは、そこそこ良いサイズばかりである。しかもマニアAには、釣れた魚が糸を切って逃げたという、相当な大きさの、もしかすると我々が憧れる「尺ゴギ」(30cmを超えるゴギ)であった可能性のあたりもあった。一方で、俺の釣るゴギは小さいやつばかりなのだ。これは技術の問題だとは思うが、一応マニアAには「自分ばっかり良いサイズ釣って、ずるいっすよ。」と文句を言っておいた。
そして、とある大物が潜んでいそうなポイントで、マニアAに相談してみた。「まず、手前を攻めてみて、その後左奥、その後右奥を攻めてみようと思う。」と。すると文句を言った甲斐があったのか、マニアAはアドバイスをくれた。「手前は必要ない。左奥から岩壁沿いをまず流した方がいいんじゃない。」と。
マニアAとの釣行を重ねた結果、最近、狙いどおりの位置にフライを落とせるようになってきた。フライを投げる際のフライラインも美しいラインを描くようになったとお褒めの言葉ももらえるようになった。その成果を発揮すべく、身を潜め、息を潜めてポイントにそっと近づき、高まる緊張感を抑え、マニアAのアドバイスどおり、左奥を狙いロッドを振った。
お気に入りのエルクヘアカディス(ドライフライの一種)は、左奥の狙いどおりの位置にふわりと落ち、予定どおりの岩壁沿いのラインを、静かに、ゆっくりと、木漏れ日がゆらゆらと反射する水面を流れ始めた。そこにゴギが潜んでいれば必ず食ってくるはずだ。そう信じ、ゆったりと流れるフライを凝視しながら、『来いっ!来いっ!』と心の中で強く願う。もう、フライ以外何も見えない。周りの音も聞こえない。只々、自然の流れと一体化したフライ一点に集中する。最も緊張感の高まる瞬間だ。
すると、岩壁沿いの渓流の深みから、ぬーっと、黒い影がフライに向かってゆっくりと浮かび上がってきた。そして瞬間的にフライに食いついてきた!喜ぶ暇もない。目の前の出来事にただ対応することしかできない。ここからは、無意識にロッドを立て、フライラインを手繰り寄せる。魚は深みへ逃げ込もうとし、ロッドは大きくたわむ。今まで渓流では味わったことのない引きだ。デカいぞ!無理に釣り上げようとすると、ラインが切れてしまいそうだ。慎重にやり取りをしながら何とか足元まで引き寄せた。大物を釣った時用に購入していたランディングネット(網)を出す余裕もなかったが、あたふたする俺を見たマニアAがランディングネットでキャッチしてくれた。
釣り上げてみると、人に自慢できるほど大きくはなかったが、良いサイズで体高もある立派なゴギである。いずれにしろ、俺の最高記録だ。最高に嬉しく、満足感に満ち溢れた。
こうなると、いよいよ「尺ゴギ」を釣ってみたくなる。
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