週間天気予報において日曜日は晴れる予報であったため、同級生のゴッツと杉と一緒に、長門市と美祢市の境界にある花尾山に登る予定を立てた。花尾山の頂上はよく整備され、360度の爽快な視界が楽しめると聞いていたので、春の暖かい日差しのもと、Helinox チェアワンに身を預け、眼下に開けるパノラマを楽しみながら、ビールを飲んでまったりと時間を過ごそうと考えていた。
しかし、直前になると、この日は終日雨の予報となっていた。予報どおり、当日は朝から雨が降り続いていたが、ゴッツも杉も「雨じゃけど本当に行く?」と聞いてくることもなく、約束の時間に我が家に集合した。
長門市渋木の市ノ尾集会所が花尾山登山者の駐車場として開放されているので、ここに車を停めた。この地点の標高は約120m、山頂の標高は669m、標高差約550mの登山だ。しとしとと降り続く雨の中、鈩コースを山頂へ向かい、民家や田畑が広がる集落の舗装路を歩き始めた。
舗装路は、やがて渓流沿いの杉の植林された森へと変わる。この辺りは湿度の高い地域なのか、杉の木は表面に緑色の苔が生していて、あたかも深い森へと足を踏み入れたかのような感覚に浸る。途中、我々の気配を感じ、斜面をあっという間に駆け逃げるシカと出会った。
杉とは、過去2回バックカントリーへ一緒に行ったが、その時は、たまたま好天に恵まれた。これに調子を良くしている杉は、「俺は“晴れ男”だから、今日も天気は回復する!」と、降り続く雨の中、豪語する。
1.5km程度進むと、なだらかな舗装路は終了し、いよいよ登山らしい道となる。勾配も若干急になり、やっと体温も上がり始めた。木々の枝が屋根となってくれているのかもしれないが、雨も降っていないように感じる。暑くなってきたので、立ち止まりレインウェアとフリースを脱いだ。
その途端である。ザーっと大粒のあられが降り始めたので、折角脱いだレインウェアに再び袖を通す。寒波が流れ込んでいるため、天候は不安定極まりなく、やはり晴天など見込めそうにはない。あられは再び雨へと変わり降り続いた。しかし、杉はこの状況下においても「俺は“晴れ男”だから・・・。」としつこく言い続けている。
登山開始から約1時間30分、山頂へと続く見晴らしの良い尾根に到着した。雨は止んでいるものの、ガスに覆われ視界は効かない。しかし、厚い雲は去り、心なしか空が明るくなり、青空も微かに覗いている。「山頂に着けば、きっと晴れる。俺は“晴れ男”だから。」と杉がまた言う。
山頂に到着したが、やはりガスに覆われ何も見えない。と諦めた瞬間、奇跡的に風がガスを流し、僅かな時間ではあったが、日本海や秋吉台を望むことができた。もしや、このまま時間を過ごしていれば、杉の言うとおり本当に晴れてくるのではないかと期待した。
山頂では、まず、春の暖かい日差しの中で飲む予定だったビールを飲んだが、寒波に伴う冷たい北風が吹きぬける山頂では、冷たいビールが苦痛でしかない。寒い中、缶を持つ手は北風とビールに冷やされ、只々『早く飲み終えて、湯を沸かし、暖かいラーメンを食べたい。』と思いながら、素早く缶を空けた。
祠の陰で冷たい北風を避け、天気が回復することを期待しながら、暖かいラーメンを食べる。しかし、期待に反し雨が降りだしたため、シートで屋根を張り、凍える手を温めながら昼食をとる。
食後に暖かいコーヒーを飲んでいると、一層北風が強くなり、一気に気温が下がってきた。そしてとうとう、4月であるにもかかわらず、雪が降り出した。
もう、山頂に留まる理由は無い。寒すぎる。手袋を持ってきていなかったことを後悔したが、まさか手袋を必要とする状況になるとは思わなかった。そそくさと片付けて、山頂を後にした。
横風と共に降りつける雪の中、本谷コースを下山する。こちらのコースも渓流沿いで、岩石や倒木等に苔が生し、まるで“もののけ姫”的な風景である。“もののけ姫”は屋久島の景色をモデルにしているとのことであったが、屋久島は雨の多い島である。花尾山一帯も雨の多い地域なのかもしれない。
下山途中にもシカが斜面を駆け上がって行くのを見たが、あっという間の出来事だったので、我々が見たものが本当にシカだったのか、それともシシ神様であったのかは確認できていない。
里まで下りてくると、さすがに寒くはなく、山頂での風雪が嘘のように、薄っすらと日も差していた。ここまで来ると、辛い登山から解放される安堵感でいっぱいになった。
最後に、杉に一言、言っておかねばならない。お前は“晴れ男”ではなく、ただの“ハゲ男”だ!
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