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Long Trail Training #01 ~萩から田万川へ~


Long Trailへの憧れ

以前、職場の先輩がジョン・ミューア・トレイルへ行ったと言った。
ジョン・ミューア・トレイルなど知らなかったので、ネットで調べてみると、340kmにも及ぶアメリカの自然歩道であり、沿道の景色は最高である。当然、“俺も行ってみたい!”と思った。
しかし、踏破には1ヶ月の期間を要する上、何と言っても場所がアメリカである。もっと身近にLong Trailを楽しめる所はないだろうか?
ジョン・ミューア・トレイルの非現実性から、単なる憧れとして諦めていたが、そんなある日、ふと思いついた。身近なLong Trailとして「中国自然歩道」があるではないか!

中国自然歩道Long Trail計画

中国自然歩道を案内する木製の看板は、何度も目にしたことがある。しかし、山口県内のそれは、どこをどう通っているのか全容が分からず計画の立てようがない。しかし、隣りの島根県ではエリアごとに詳細なマップが作成され、ネットでも公開されていた。
これを基に、十種ヶ峰から山間部を通って浜田市まで行く125km、3日間の行程をプランニングした。

計画変更

ところがである。ゴッツと初心者船山の3人で日程を合わせたが、決行の数日前になってゴッツの都合が悪くなった。
仕方なく、今回は事前のトレーニングとして、田万川までの約45kmを歩き、温泉に入ってキャンプを楽しむ2日間の計画に変更した。帰りに歩くかどうかは2日目の気分しだいで決める。

出発

まだ暗い朝6時頃に自宅を出発し、途中、初心者船山と合流し、その後ゴッツと合流した。
週間天気予報でこの日は雨の予報であったが、嬉しい誤算で気持ちの良い好天となった。もちろん、まだ三人とも元気である。元気なのは良いが、ゴッツが良く喋る。

ミルキー

とりあえず、大井のLAWSONまで歩いてきた。この地点で約14km。
LAWSONでは、ゴッツが皆のためと言ってミルキーを買った。何の意図があったかは分からなかったが、後に、俺がこのミルキーに感謝することとなるとは、この時点で想定していなかった。

足のマメ

阿武町のサンマートまで来た。この地点で約18kmであり、まだ半分も歩いていない。時刻はまだ11時にもなっていないが、沿道に店などほとんどないルートである。ここで早めの昼食を済ませることにした。
店の前に座り込み昼食休憩をとりながら、痛みを感じていた足の裏を確認してみた。すると、マメが左右の足に一つずつ出来ている。
ここで疑問が生じた。今までマメができた経験はほとんど無いので、ここから先を歩くにあたり、このマメは潰した方がいいのか、それとも、そのままにしといた方がいいのか、その処置方法が分からない。
すると、初心者船山がすぐにスマホで調べてくれ、こう言った。「五本指に別れた靴下を履くといいらしいっす。」と。いや、それは、出発前の準備段階には有用な情報ではあるが、今言われても・・・。
少なくとも、今、このマメが痛いという事実がある。潰すと痛みが酷くなる可能もあるが、もしかすると痛みが軽減する可能性もある。未だ半分以上の距離を残してこの危険な賭けに挑むのか、しばらく懊悩したが痛みが軽減する可能性の方に賭けてみることにした。

賭けの結果

早々に休憩を終え、再び歩きはじめる。すると、踏み出した一歩目から潰したマメに激痛が走る。
失敗だったのか?これから先、何時間も苦痛に耐え続けなければないのか?そう考えると絶望感に支配され始め、初冬とはいえ暖かく気持ちの良い天気とは裏腹に、重たい気持ちになる。
ところが、痛みに耐えながら1km程度歩いたころ、慣れたのか、麻痺したのかは分からないが痛みは一切気にならなくなり、快適に歩くことができた。マメを潰したことが良い結果に繋がったのだろう。
俺的には、一定の解決を迎えることが出来たのだが、この辺りから、ゴッツも初心者船山も口数が減ってきた。

限界到達

その後、休憩の度に足を確認するとマメが増えており、その都度マメを潰し、絆創膏を貼り付ける。歩きはじめると、激痛でまともに歩けないが、1~2km歩くと痛みが薄れ耐えることができる。
そうしたことを繰り返していたが、約30km地点の休憩以降、様子がおかしくなった。マメも痛いが、脚も痛い。具体的に脚のどこが痛いか説明できないが、あらゆる所が痛い。マメと筋肉とか筋とかのあらゆる痛みに耐えきれず歩みが遅くなってしまい、前を歩く初心者船山の速度に着いて行けない。
一方で、ゴッツも初心者船山も、マメはほぼ出来ておらず、脚も痛むらしいが大したことはなさそうだ。

辛く長い大刈トンネル

坂道を登り、1,469mの長く暗い大刈トンネルに入る。
脚が痛い。痛くて辛い。痛いことが辛いのか、痛さと辛さが並列で存在しているのかは分からないが、痛くて辛い。トンネルには往来する車の騒音が響き渡り、会話もままならないので、黙々と下を向いて暗いトンネルを歩く。
頭の中で繰り返される「痛い」「辛い」を振りほどきたいが、どうしても痛さと辛さに執着してしまう。この痛みと辛さから逃れる術は無いのだろうか?暗く閉鎖的で長く騒音の響き渡る細く湿った歩道のトンネルは、思考を負の方向へ振りゆく。痛さと辛さに足は重く、そこに空腹感まで加わり、涙が出そうになる。

ハンガーノック?

ん?待てよ。俺は腹が減っているのか?
よく考えてみると、朝5時頃パンを一つ食べ、11時頃に軽く昼食をとったが、この時点で16時。約10時間歩き続けているが、必要なエネルギーが足りていない可能性がある。歩きだからと軽く考えて、この機会に溜まった脂肪を燃焼させようとエネルギーの摂取を控えていたのだ。
トンネルの出口付近で、そそくさと(と言っても普通の速度だが。)先へ行ってしまっていたゴッツを大声で呼び止め、ミルキーをねだった。
ゴッツから数粒のミルキーを受け取り、早速一粒を口へ放り込む。すると、その一粒を舐め終わらないうちから、歩みの速度が戻ってきた。
ついさっきまで、時々、ゴッツと初心者船山が立ち止まって俺を待たなければ一緒に進めなかったのだが、もうその必要はなくなり、同じ速度で進むことができる。
足の痛みは変わらないが、辛さは一気に薄れ、動かなかった脚が動き始める。これは何度か自転車で経験したことのあるハンガーノックの症状と同じだ。しかし、歩くことごときでハンガーノックになるのか?はたまた気分の問題なのか?

須佐で再び奮起

須佐のキヌヤに到着し、休憩した。重いザックを背中から下ろし、悲鳴を上げる脚を投げ出し、しばし開放感に浸る。
しかし、気持ちは開放されない。痛い脚は重く、体は疲れ、日暮れも間近で気温も下がってきたが、まだ目的地の田万川までは8kmもある。8kmを途轍もない距離に感ずる。通常時なら、もう無理と言っているだろう。
だが、弱音を吐いていても目的地には到着しない。痛くても寒くても辛くても、歩みを進めさえすれば必ず到着する。Long Trailにおいて、泣き言は通用しないのだ。諦めてしまえばそこで終わってしまう。
そう思えば、ここで休憩し続けてもいられない。這ってでも辿り着いてやるという心意気のままに、再び前進を始めた。

素直な心

キヌヤを出発して、心意気とは裏腹に、脚の激痛に顔を顰めながら亀のように歩みを進める。
そして、わずか100m歩いた所に須佐駅と表示される建物がある。
  • ゴッツ「乗るか?」
  • 俺「歩くぞ!」
  • ゴッツ「乗ってもええぞ。」
  • 俺「一応、時刻表だけ確認するか。」
  • 初心者船山「20分後です。」
  • 俺「よし、乗ろう。」
三人は、全てから解放された安堵感を隠さず、素直に列車に乗り、目的地の田万川近くの江崎駅へ向かった。

200円の価値

須佐駅から江崎駅までは一区間。運賃は200円。
もし、あのままこの区間を歩いていれば、最悪、4時間近くの時間を要したかもしれない。そうなると、田万川のスーパーも温泉も営業時間を終えてしまっていて、キャンプも楽しくないだろう。そして何よりも、マメも筋肉も筋も最高に痛いままに、暗くて寒い苦痛な夜道を4時間も歩かなくてすむ。
たったの200円で、スーパーに立寄ることができ、温泉にも入れて、約6kmも短縮してくれて、4時間の苦痛から解放してもらえる。あぁ、何て幸せな事だ!
もし、この対価が1,000円と言われても喜んで支払っただろう。

最後の歩き

江崎駅に着いた。時刻は17時44分で、辺りはもう暗い。
目的のキャンプ場まであと2kmを歩かなければならないが、一旦途切れた気持ちのままに、痛くて重い脚を引き摺りながら歩くのはとても辛い。
途中、スーパーに寄って食材と酒を買い、我慢できずに店先からすぐにビールを飲み始めた。
最高に辛い2kmだったが、ビールでいくらか気は紛れたこと、そして何より、あと2km歩けばもう歩かなくても済むのだと思えたことで、歩みを進めることが出来た。

至福の温泉&キャンプ

早速、田万川温泉憩いの湯へ行く。日頃、温泉には特に興味のない俺だが、この日ばかりは、ゆったりと放心状態で湯船に浸かる。冷えて疲れ切った身体とすり減った心が徐々に癒えて行く。
その後は隣りのキャンプ場へ行き、直にテントを張り、改めて乾杯して夕食をとった。そして、早々にテントに潜り込みスリーピングマットに体を横たえながら、体に一切のストレスがかからない状況の幸福感を噛み締めつつも、十分に噛み締められないうちに眠りに落ちた。

2日目の行程

翌朝、明るくなってテントから這いずり出た。
腹が減ったので朝飯を食いたいが、朝食は、まだ爆睡中の初心者船山のテントの中だ。ゴッツは、無慈悲に初心者船山のテントを開け、内の朝食をもぞもぞと引っ張り出したが、初心者船山は前夜の睡眠不足もあって全く起きる気配が無い。
昨夜は歩くことが困難な状況だった俺だが、今朝は普通に歩ける。しかし、潰したマメが痛いし、歩いて帰るとなると、早い段階で再び脚は痛み始めるだろう。そんな言い訳を頭の中で考えていたが、何を置いても、もう歩きたくない。この考えにはゴッツも初心者船山も異論は唱えず、鉄道で帰ることにした。
初心者船山は、昨夜まで歩いて帰る可能性を示唆していた手前、素直に同意しなかったが、「無理すると脚が壊れるよ。」と誘導すると、待ってましたと言わんばかりに「そうっすねぇ。しょうがない!」と二つ返事だった。面倒くさい奴だ。

反省

今回、ゴッツの都合さえ合えば、山間部の125kmを3日間で歩く予定だったが、結果的に到底無理な計画だった。歩くだけだから頑張れば何とかなると過信していたが、自分が思う以上に軟な身体だった。
今年は自転車に4,000km以上乗ってコンスタントに身体を動かし脚にも負荷をかけていたので大丈夫だと思っていたが、自転車に乗ることと歩くことは異なるものなのだ。加えて、テントや寝袋等を詰め込んだザックを担ぐことが普段の活動以上に脚に負担となり、マメが出来たり筋肉が疲労したりするのだ。
改めてそう考えると、どれも当然のことのようだが、体験して初めて身に染みて理解できた。
遠くない将来に、中国自然歩道125km計画を実行できるよう、地道な身体づくりを始めなければならない。

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