この日は、職場の先輩である菅原さんからお誘いを受け、初心者船山と三人で東鳳翩山へ登った。
朝8時に一の坂グラウンドに集合し、8時15分に登山を開始する。初雪の舞った昨日からの寒波の影響で、登山開始時点の気温は3度。12月とは言え、暖冬で暖かい日が続いていたが、いよいよ冬らしくなってきた。
おそらく昨日の初雪が原因だろうと思うが、登山道はしっとりと湿っている。菅原リーダーの後に付いて、歩きやすく整備された登山道を登っていく。
初心者船山は、昨日開催された萩二輪の忘年会で飲み過ぎたらしく、二日酔いの状態だ。いつもは先頭をサクサクと登っていくが、この日は本調子ではなく足取りも重いため、途中で休憩を挟む。
休憩を終え、再び歩きはじめると、小さな雪がちらつき始めた。雪は降ったり止んだりを繰り返す。ひんやりと張りつめた空気の中に舞う雪が、火照った頬を気持ちよく冷ましてくれる。
最後の階段を登り詰めると、9時45分ごろには見晴らしの良い標高734mの山頂に着いた。
山頂には、温度計がぶら下げてあった。スタート時点で3度だった気温は、標高差600mを経た風通しの良いこの山頂では、いったい何度まで下がっているのだろうかと強い興味で覗いてみた。理論上では4度近く下がるはずだが、温度計はスタート時点と同じ3度を示している。確かに寒波は去りつつあるが、もう少し空気を読むというか、期待に添う対応をしてくれてもいいのだが・・。
山頂に着くと、HELINOXに座り、JETBOILでコーヒーを入れ、菅原さんの準備してくれたパンを御馳走になる。寒い中とは言え、大パノラマの山頂で温かいコーヒーを飲みながら美味しいパンを食べていると、やはり幸せである。
間もなく、一人の高齢女性が登ってきて、そのまま山頂を通り過ぎ、西鳳翩山方向へ歩いて行った。その直後、一羽のカラスが頭上近くに現れ、狭い山頂をぐるりと一周して、西鳳翩山方向へ一気に急降下していった。
もしかすると、カラスはさっきの高齢女性ではないかとくだらない冗談を言いい、その延長線で、菅原さんから、最近「山怪」という本が流行っているという情報があった。昔からの非科学的な体験談等だろうが、きっと日本昔話のように、少し怖く、そして面白いのだろう。
そんな時間を過ごしていると、突然、犬が近寄ってきた。付かず離れずウロウロしているその犬をよく見ると、何と、犬ではなかった。キツネだ!
キツネはごく稀に目撃することはあるが、これほど人を恐れず、近くで見るのは初めてである。何かがおかしい。こいつは本当にキツネなのか?高齢女性と、カラスと、キツネが、同じ生き物なのか?それともたまたまそれぞれが現れたのか?もう既に、我々は「山怪」の世界に入ってしまっているのかもしれない。
しかし、このキツネ、野生にしては肉付きが良いようにも思える。きっと山頂で常習的に人間から食べ物をもらっているのだろう。餌付けをされた野生動物は悲惨な末路を辿ることがあることを北海道で学んだ俺は、このキツネが心配になった。
下山ルートは、ショウゲン山を経由し、萩往還をスタート地点まで下る。ショウゲン山への尾根は、一面が雪で薄っすら白くなっていた。狭い範囲だが場所によって降雪の状況も違うようだ。
そして、萩往還を歩いている時、菅原さんが生物の体重と寿命について話してくれた。体重の大きい生き物は寿命が長くなるという話だ。俺も鼓動が早い生き物は短命で、鼓動が遅い生き物は長生きであるという話を聞いたことがあり、それを話した。
すると、菅原さんは「俺は鼓動が遅いから長生きするかもしれん。」と言い始めた。その言葉を聞き、山頂での「山怪」と菅原さんの「長生き」がリンクしてしまい、俺の頭の中では“東鳳翩山の山頂に住む仙人”の像が浮かんでしまった。そしてその仙人を“菅爺”と命名し、菅爺の生態についての話で盛り上がる。
そうこうしていると、昼下がりの13時30分ごろ、スタート地点に戻って来た。
今回は、半日程度で約12kmの移動だったが、中身の濃い、充実した登山だった。
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