無計画な登山
急遽、初心者船山と蕎麦ヶ岳に登ることにした。蕎麦ヶ岳には、登山道があり山頂もある程度整備されていて、地図を頼りに道なき道を進む登山とは違って気楽に登ることができる。
ネットで蕎麦ヶ岳の情報を調べていると、東側に登山道があるようだが、どうやら西側にもマイナーな登山道があるようで、そちら側から登った方が面白そうである。その登山道は、川沿いに登り、最後は尾根に沿って山頂へと続いている。そんな大雑把なルート把握をして、登山口へ向かった。
歩きやすいルート
車を停めてからは、やや荒廃している林道がしばらく続く。林道は、ネットで調べたルートのとおり川に沿っており、渓流のせせらぎが聞こえてくる。足元は、朝まで降った雨で少し緩いが、一向に問題はない。歩きやすいので、道なりにどんどん進んでいった。
迷子
1kmも進まないうちに、林道は細くなり、渓流へと突き当たった。渓流を渡った所には登山道らしきものが見えたので、そちらに進んでいくと、道はなくなった。もう一度渓流を渡って戻りルートを探すが、渓流の手前側には登山道らしきものは見当たらず、地形的にもルートはありそうにない。渓流を進んでいくのかとも考えたが、雨に濡れた石は一歩一歩が恐ろしい程に滑るので、とても歩けない。
こうなると、渓流を渡った所に見えた登山道らしき所を進んでいくしかない。
シダ地獄
渓流を渡った所に見えた登山道らしきルートを進んだが、登山道らしきルートはすぐにシダに埋もれて見えなくなった。腰のあたりまで伸びたシダをかき分けながら、登山道があったであろうと思われるルートを進んでいく。しかし、進むにつれ、シダは背丈を超えるほど高くなってきて、足元には枯れたシダだか何だか分からない物が藪と化して密集しており、膝の位置より高く足を上げなければ一歩を踏み出せない。シダは、昨夜まで降った雨を露として大量に蓄えており、体を濡らす。傾斜はどんどん急になり、見えないが濡れた植物や枯れ枝で足元は滑りまくる。まるで雪山を歩いているかのように、一歩、一歩に時間を要し、体力も消耗する。
そしてこの時、もう川沿いには進んでいない。その事は分かっているが、この環境ではとても川沿いに移動することは出来なかった。とりあえず尾根まで上がり、尾根伝いに移動しようと考えていた。そうすれば、きっと、このシダ地獄からは抜けることができるだろうと。
尾根もシダ地獄
尾根が近付いてくると、いよいよ斜面は急峻である。足元も最悪であり、何かに掴まっていなければ、一歩を踏み出せない。この日は気軽な登山をするつもりだったが、またいつものパターンに陥っている。尾根まで上がるが、一向にシダ地獄から解放されそうにはない。1月の寒空の下、服をビショビショに濡らしながら歩くシダの中は、ストレス以外の何ものでもない。
結局、尾根を歩いても、引き続きシダ地獄である。
計画変更
手元の地図を確認すると、今歩いている尾根を進んでいけば、蕎麦ヶ岳の山頂へ向かうことはできる。しかし、このシダ地獄がどこまで続くのかも分からないので、どれだけの時間を要するのか見当もつかない。しかも、服は濡れて重く、冷たい。登山靴の中にまで、たっぷりと雨水が入っている。もう少し快適なハイキングの予定だったので、タオルも着替えも持ってきていない。このまま、山で数時間過ごすなんて、嫌だ。寒いし、冷たいし、楽しくないし、何か分からんけど、もう嫌だ。
初心者船山に、もう帰ろうと言うと、彼も全力で同意した。
帰りのルート
さて、帰ると言っても、やはりシダ地獄を歩かなければいけない。今来たルートを戻ることを考えると気が滅入る。しかし、急ではあるが足ものと斜面を谷に降りて、そして滑るので危険ではあるが渓流を歩いていけば、最もシダ地獄の滞在時間が少ないルートとなる。困難を極めそうだが、何より逸早くシダ地獄から解放されたい。急斜面を下る
シダで前も見えなければ、足元も見えない。一歩先の地形は、足を踏み出してみなければ分からない。木の幹などに掴まりながら、一歩、一歩をゆっくりと踏み出して行く。時には、踏み出した一歩が、ズブズブとシダの藪に飲み込まれてしまい1mくらい落ちてしまう。木の幹から手が離せない。掴むための木がある方向に右往左往しながら下って行った。
滑る渓流を歩く
そして、何とか谷底の渓流に降り立つことができた。もう、きっと、これでシダ地獄からは解放されるという安堵感は大きいが、まだ、この先の渓流が簡単に歩けるのかどうかも分からない。滝や滝つぼがあれば、再びシダ地獄に入って迂回しなければならない。何はともあれ、進んで行く。これまた、一歩、一歩を確認しながら、滑らないように、ゆっくり歩く。
岩場で滑りこけると、とても痛いし、運が悪ければ大事に至ってしまう。後ろを歩く初心者船山がこけないように、振り向いて、注意喚起した。そして前を向いたとたん、後ろから鈍い音が聞こえた。初心者船山が、もう滑りこけていた。
無事帰還
まるで氷の上を歩くかのように滑りやすい渓流だったが、運よく、最初に迷子になった地点まで戻ることが出来た。そして、歩きやすい林道を歩いて車まで戻った。たった2kmを2時間かけて移動し山頂には全く近寄れなかったが、十分に冒険をさせてもらえ満足だった。残念な思いは何もない。
しかし、次回こそ、事前に正しい登山道を理解し、山頂に辿り着きたい。
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