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The Summit Of Japan


一日目

想望の富士

十数年前、富士登山にチャレンジし、八合目付近まで登ったが、時間の関係上、やむを得ず登頂を断念した。
富士山といえば、言わずとも知れた日本最高峰である。日本人ならば、一度は登頂してみたいと誰もが思うだろう。
登山ルートは、4つ。標高2,300m付近から登山を開始する吉田ルートと富士宮ルートは、人気のコースで混雑するらしい。それより低い2,000m付近からの須走ルート、1,400m付近からの御殿場ルートは混雑していならしい。
総合的に判断して、須走ルートを選択。六合目(標高約2,600m)の山小屋で一泊して、山頂を目指す。

登山開始

登山シーズン中はマイカー規制されているので、須走口乗換駐車場に駐車し、シャトルバスで五合目(標高約1,970m)の登山口へ向かった。
登山口には13時ごろ到着。この日の天気予報は曇りで、運が悪ければ雨も降る可能性がありそうだ。
登山口からは霧の立ち込める樹林帯を歩く。

六合目

この日は、夕方までに六合目まで、標高にして約630m登ればよいだけであり、全く急ぐ必要は無い。登山道沿いの見慣れない植物等を楽しみながら、ゆっくりと登る。
そして15時頃に、六合目(標高約2,400m)に到着し、山小屋前の腰掛を借り、一息つく。

今日の目的地は、六合目の瀬戸館という山小屋である。この瀬戸館は、六合目と言っても本六合目に在る。現在地は六合目であり、本六合目ではない。本六合目までは、標高にして、あと約200m登らなければならない。
山における”○合目”という表現は、明確な基準はなく、標高であったり距離であったり、又は感覚であったりする。その上で”本”が付く方と付かない方の違いなど、よく分からない。要は、本六合目に行けばよいのである。

蒼空

休憩を終え、再び登り始める。
この辺りから、標高的に森林限界を迎え始め、周囲の植物も背丈が低くなりつつある。それに伴い、周囲の視界も開けてくる。
そのタイミングに合わせてくれたかのように、時折、蒼空も覗き、登山開始時とは一転し、爽快な夏山の景色へと様相が一変した。

瀬戸館

本六合目の瀬戸館には、六合目から約1時間で到着。
8月下旬の残暑真っ只中ではあるが、ここは標高2,600m。Tシャツ一枚では寒く、フリースを羽織らずには居られない。小屋ではストーブも焚かれている。
瀬戸館の主人は、気持ちよく我々を迎えてくれ、最近の天候に伴うご来光の状況等、我々が富士山を楽しめるよう、様々な情報を提供してくれる。そして、小屋の近くに洞穴があり祠が祀ってあるので、行ってみるよう勧められた。
山小屋ではする事がなく、暇なので早速行ってみる。這いつくばってやっと入れる小さな穴に潜り込むと、中には真っ暗な空洞が開き、ライトなしには何も見えない。洞穴を進むと、奥に小さな祠が祀られていた。冒険心を駆り立てられる、ちょっとしたツアーを楽しめた。

山小屋の夕暮れ

景色を楽しみながら、冷たいビールを飲む。
山小屋では、冷たいビールだけではなく、定食やカレー、うどん、菓子にジュース、アイスクリームまで販売している。不便さもアウトドアの楽しみの一つであるが、冷たいビールが飲めることは嬉しい。複雑な気分である。
この日は、我々のほかに3名のおばさま達が1組宿泊するだけのようであり、山小屋には、落ち着いた静かな時間が流れる。
茜色に染まりゆく空と、徐々に増える街の灯りを見下ろしながら、標高2,600mの夕暮れ時を楽しみ、早々に床に就いた。
いよいよ明日は、山頂を目指す。

二日目

ご来光

早く寝すぎたので、3時には目が覚めた。暗がりの中、山小屋の外に出てみると、風が強く、とても寒い。
山頂を眺めると、ご来光を山頂で見るための登山者のヘッドライトが列をなしている。
そして眼下には、麓の夜景が美しく見える。そして遠くの雲には、時折、稲光が走っている。その光景は美しく、寒い中にも関わらず、いつまで見ていても飽きない。
そして4時を過ぎたころから徐々に明るくなりはじめ、山中湖が確認できた。湯を沸かし、カップヌードルを食べ、温かいコーヒーを飲みながら、ご来光を待つ。
しかし、5時頃には日が昇ったものの、雲に隠れてご来光は拝めなかった。だが、ご来光に照らされて輝く雲や、眼下の雲海、雲海の切れ目から除く山林や街は十分に美しく、残念な気持ちなど湧きあがらない。
逆に山頂はガスに包まれていた。きっと、一切の景色は望めなかっただろう。
ゆっくりと朝の景色を楽しんだ6時頃、山小屋を後にし、頂上へ向け出発した。

登山再開

この日の山頂の天気予報は、晴れのち雪。最高気温7℃、最低気温は6℃である。
俺の住む山口県で考えれば、真冬の気候だ。真冬の装備を整えていない前提では、基本的に登山に適した天候ではない。
観光地化した富士山と言えど、自然が牙をむく山である。状況によっては、登頂を諦める必要があるかもしれない。

昨日と違う景色

この日の景色は昨日と異なり、完全に森林限界を超え、雄々しい山肌とその向こうに麓の景色が見下ろせる。標高が高いだけあって、当然ながら日常的な景色とは違うので、新鮮味を感じながら登ることができる。
写真を撮るために度々足を止めることが、ちょうどよい休憩になる。
無理をすると、体内の酸素を過剰に消耗し、高山病になってしまう。高山病になれば、頭痛や吐き気等で動けなくなるが、自分の足で下山しなければ症状は治まらない。若い頃は何でもやれば出来る気になっていたが、今はあの頃と違い、血も薄くなった。登頂のみを目標に、ゆっくり、ゆっくりと登る。

八合目

8時頃には、八合目に到着した。
この辺りから、人気の吉田ルートと合流する。
我々が登ってきた須走ルートは、人がまばらで静かだったが、ここから急に人が増え賑わってきた。外国人率もかなり高い。中には死にそうな顔をして座り込んでいる人もいる。
この合流地点で、道案内をしている人がいる。下山時にここで道を間違え、全く違う場所に降りてしまう人が多いようである。
その道案内人は若い男性で、職業として業務に従事しているのだろうが、そこそこの声量で鼻歌を歌いながら、標高3,400mの職場を陽気に楽しんでいる。
そして、彼はハートが強い。
須走ルートへ下山し始めた外国人に、日本語で「須走ですか?」と確認するが、外国人は応答しない。彼は業務を全うすべく、大声で「す・ば・し・り・で・す・か!」と重ねて問いかける。しかし、外国人は応答しない。負けじと大声で「す・ば・し・り・で・す・か!」と、繰り返す。それでも外国人は応答しない。
彼は諦めて、陽気に鼻歌を歌い始めた。
しばらくすると、さっきの外国人は結局戻ってきて、彼に外国語で何かを尋ねている。彼は日本語で「えー?もぅ、どこに行きたいのぉ?」と優しく対応していた。

山頂へ

賑わいの増した登山道を黙々と歩く。
もう、山頂は見えている。しかし、目に見えている景色が広大すぎて、遠近感を見誤ってしまう。見えているのに、歩けども歩けども、一向に近づかないのだ。
空気が薄くなったためか、単純に足が疲れたからなのか、原因は分からないが歩みが遅くなっていることは間違いない。息も切れる。
しかし、標高差にしてあと400m程度。歩みを進めさえすれば、きっと到達できるはずである。
その事だけを信じて、ゆっくりと歩みを進める。

お鉢巡り

11時頃、山頂に着いた。山頂には、神社や食堂・売店が建ち並び、ちょっとした町のようだ。
だが、ここは本当の山頂ではない。
本当の山頂は、富士の噴火口をぐるっと周る(お鉢巡り)途中にある剣ヶ峯である。そこが富士山の標高3,775.6mポイントであり、真の山頂である。
この日は午後から天候が崩れる傾向にあり、徐々に霧も立ち込めてきたが、ここまで来てピークを踏まない訳にはいかない。
その思いから、すぐさまお鉢巡りを始めたが、辺りはガスに包まれ火口は疎か道の先も見通せず、火口の北側に差し掛かると、立っていることもままならない程の風が吹き始め、本格的に天候が崩れ始めたかと不安に思ったが、西側に向かうと再び穏やかになった。

日本の山頂

12時頃、剣ヶ峯のピークに到達できた。
残念ながら、ガスで周囲の景観は楽しめなかったが、目的は達成された。
剣ヶ峯から火口周回ルートに降りると、一瞬霧が晴れ、火口を覗き込むこともできた。
もう、何も思い残すことはない。

富士山に登って思うこと

やはり、一度は登っておきたい山であることには間違いなく、景色もよいのだが、安全確保や環境保護のために様々な規制があり、山小屋が山頂付近まで幾つも建ち、そこには快適な住環境や飲食物等全てが揃っており、観光地化され人は多く、登山道にはトイレの糞尿を処理する匂いが強く漂っていた。
俺にとって登山も含めたアウトドアとは、自由で、景色が美しく、誰にも気を使わなくてよい自然の中へと社会のしがらみから逃れることであり、富士山は、それを満足はさせてくれない。
美しい山であることには間違いなく、日本一の山への登頂の喜びも大きいが、また登りたいとは思わせてくれなかった。
おそらく、もう登ることはないだろう。





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