遠い江舟岳
ゴッツが「萩駅から川上の江舟岳まで歩いて行って登ろう。」と言ってきた。軽い気持ちで受け入れたが、確認してみると、麓までの往復で55kmある。それに加えて江舟岳の標高は600m。我々には無理である。阿武川ダムの堤体からスタートすれば、麓まで往復で26km。我々が快適に歩けるのはせいぜい30kmである。江舟岳の登山も含めて考えると、阿武川ダム堤体からスタートするくらいでギリギリだろう。
朝のダム湖
3月上旬のダム湖の朝。ヒンヤリと肌寒いが、清々しい天気である。7時30分頃に、阿武川ダム堤体をスタートし、歩き始めた。寝起きモードから、徐々に活動モードに切り替えながら、淡々と歩く。
途中、ダム湖に流れ込む渓流を渡る橋から、ダム湖に対して視界が広がっている。
太陽が昇り、徐々に陸地の気温が上がり、海上と陸地の気圧が逆転しつつある最中に風が留まる”朝凪”により、湖面はとても静かな鏡面と化していた。
こんな時間に、ゆっくり観ることなど今まで無かった阿武川ダム湖だが、こんなに美しい表情を覗かせる瞬間があるのかと驚いた。
道間違い
11時ごろ、長門峡の萩側入口に到着した。ここで、一応、地図を確認してみた。
江舟岳へは、ここからまだ先の曲がり角を曲がると認識していたが、どうやら、もう少し手前を曲がらなければならなかったことに気付いた。折角ここまで歩いて来たが、戻らなければいけない。
この間違いで、全行程30km程度の予定が、35km程度にまで伸びてしまった。我々は30kmを歩くのがやっとの脚力であり、しかも今回は登山を含んでいる。そんな我々にとって、行程が5km伸びてしまうことは痛手だ。
だが、だからと言って計画を変えるほどの問題でもない。本来、曲がるべき曲がり角まで戻り、江舟岳を目指す。
江舟岳の麓へ
江舟岳へと向かう道は、谷間の渓流に沿っており、両脇には岩肌の露出した雄々しい山が見える。渓流には、いくつもの滝があるが、よく見える滝もあれば、音だけが聞こえてくる滝もある。途中、20m程度上から崩れてきたと思われる大きな岩が道を塞ぎ、自動車は通行止めになっていた。
江舟岳登山
江舟岳の麓まで到着すると、一息入れ、登山を開始した。林道を少し歩き登山道に入ると、ヒノキ林の急斜面に沿って急激に標高が上がっていく。
息を上げながら一歩一歩進むが、急な登坂は中々終わらない。いい加減、休憩したいと思ったころ、鉄塔の建つ、少し開けた場所に出たので、これ幸いと休憩をとった。
ここは展望が開け、江舟岳から西の方向を眺望出来る。付近の地理感が無いため、見えるランドマークが何処の何かは分からない。
休憩を終え、先へと進む。
ここからは、なだらかな尾根を移動するため、極端なアップダウンは無い。しかし、20km以上も歩いた後の登山で、皆の表情は明るくはない。
雑木林の中の頂上に着くと、昼食をとり、そそくさと下山した。
長い帰り道
通常、登山を終え、登山口まで戻ると、そこに乗ってきた車が待っていてくれているが、今回は、ここからまだ10km以上も歩かなければならない。無意識のうちか、必要に駆られてか、申し合わせた訳でも無く、登山の合間にいつの間にか、皆がそれぞれ杖を手にしていた。
口数も少なくなった遠い帰り道は、ひたすらに時間が長く感じられる。
脚も段々痛くなり、残りの距離が最大の関心事となる。いや、正確には残りの時間だ。苦痛に耐え続けるだけの残りの時間だけが気になるのだ。
あと、1時間30分程度。まだ先は長い。あの時、道を間違えなければ・・。
あと、1時間。まだ1時間も耐え続けなければいけないのか?
あと、40分。足が痛い・・。
あと、30分。まだ10分しか経過していないのか?
あと、20分。早く解放されたい。
あと、少し・・。もう少し・・。
そして18時ごろ、やっとの思いで阿武川ダム堤体まで戻って来ることが出来た。長い、長い帰り道だった。
途中、何度か休憩はしたが、10時間30分も移動し続け、もう皆くたくただが、登山も含めた約35kmの移動が可能だったという結果は、一つの成果である。
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