オホーツク海
この日は網走から、いよいよ知床半島へ向かう。途中、小清水原生花園に立ち寄る。小清水原生花園は、涛沸湖(浦士別川)とオホーツク海に挟まれた自然公園で、その名の通り原生花や野鳥を観察できる。しかし、俺はそこには興味がない。遊歩道を抜け、オホーツク海に面した砂浜に降り立つ。ここの海では何が釣れるのだろうか?河口付近でルアーでも投げてみたいが、残念ながらロッドもルアーも持って来ていない。
砂浜の右手には、羅臼岳が遠目に見える。いよいよ知床半島も目前だ。
クオリティの高いラーメン
オシンコシンの滝を観光した後、斜里町で早めの昼食をとる。立ち寄ったのは小さな漁村の「波飛沫」というラーメン屋だが、地元でも評価の高い店らしい。ラーメンブームが巻き起こり始めたのは、25年くらい前だろうか?それからしばらくの間は次々と美味しいラーメンに出会えていたが、最近では、どこで食べてもある程度美味しく、その反面、感動も無くなってしまった。
しかし、この店で食べたラーメンは久し振りに美味しいと感じた。特筆すべき特徴があるわけではないが、ただ味の濃い、ただ脂っこいラーメンとは違い、底味があり、スープと麺が融合し、素材の全てが喧嘩し合うことのない素晴らしいバランスで、単純に美味しく食べる事が出来た。
ラーメン界の頂点を目指して自己主張を強めるのではなく、食事としてのラーメンの美味しさをただ極めていくという姿勢を感じることのできるCoolな一杯であった。
ブルぺの滝
知床半島の中程、オホーツク海側に流れ落ちるブルぺの滝。知床自然センターから遊歩道を歩いて行く観光スポットである。森林を抜けていく遊歩道を1km程度歩いて行くと、断崖に流れ落ちる美しい滝があるのだが、もちろん、ヒグマの生息地である。ヒグマが確認されれば立ち入り禁止になるエリアらしいが、今朝もヒグマが目撃されたと言う。ここに着いたのはちょうど正午ごろだったので、ほんの数時間前だ。なので係員は「気をつけて下さいね。」と言うが、違和感を感じる。日頃から、ただ“ヒグマは恐ろしい”と思い続けていたが、現地では、ヒグマを恐れてはいるものの必要以上には恐れていない。ちょっとしたカルチャーショックだった。
若干の勇気とともに遊歩道を進んで行くと、森林が開けた。この辺りが今朝のヒグマ目撃ポイントらしいが、その先の断崖に近づいて行くと、ブルぺの滝が流れ落ちていた。
陽の光を浴びて飛沫を虹色に輝かせながら、断崖をオホーツク海へと注ぎ落ちる。一瞬にしてヒグマへの恐怖を忘れ、そのCoolな美しさに引き込まれた。
知床クルージングツアー
知床半島は国立公園の特別保護地区であり、高度に管理されているが、特に立ち入りが規制されている訳ではなさそうだ。しかし、その中程までしか道路は繋がっておらず、そこから先へ進むためには自らの足による事になるが、世界有数のヒグマ密集地であるだけでなく、高度なアウトドアスキルを身に付けて無ければ先に進む事は困難であり、事実上、人間を寄せ付けない秘境となっている。
そんな知床半島を先端まで簡単に満喫させてくれるのが、海からのクルージングツアーだ。
知床半島の北側沿岸沿いに、何本もの滝や色々な形に侵食された岸壁、番屋などを案内されながら東へ進む。次々と現れるダイナミックな光景に圧倒されていると、こんどは目前の岩にイヌワシがいると案内された。 その次には、海岸に子連れのヒグマがいると案内された。まだ遠く点にしか見えないが、確かにそれらしいものは見える。
Cool北海道の最高潮
他のツアーの船がヒグマのいる海岸に近寄っているので、“我々の船も今から近寄ってくれるのだろう、早くヒグマを間近で見てみたい!”と思っていたら、どうも船の様子がおかしい。エンジンをふかしたり緩めたりを繰り返している。程なくして、スクリューが変形したため航行が困難となったので、他の船に乗り換えるようアナウンスがあった。しばらくすると、海岸付近でヒグマを観察していたツアー船が近寄って来て、我々の乗っている船に横付けした。我々は既に多くの客を乗せているその船に乗り移った。
北海道に来てヒグマを見るという、今回の旅行において最も重要なこの瞬間の事故。我々の乗り移った船は、もう一度ヒグマのいる海岸に近付くという気の利いた航路は取らず、そのまま先に進んでしまった。
その後も岸壁の滝等を観察しながら、知床半島の先端である知床岬に到着した。
後はもう引き返すだけだが、このツアーにおいて、帰りは、クジラやシャチ、イルカと出会えるかもしれないという触れ込みである。クジラやシャチを見ることが出来れば、この上なく嬉しいことだ!
メインは苦痛な思い出
しかし、進めども進めども何とも出会わない。出航して3時間も船に乗っていると、いい加減、飽きる。その上、夕方の洋上を風を切って走る船の甲板は、足がガタガタと震えるほど寒い。本当の意味でCoolだ。出航して3時間45分後、やっと港に帰り着いた。せめて、ヒグマを間近で見ることが出来ればこのツアーにも価値を感じることも出来たが、知床岬を見ることに特に驚きはないので、別途準備されている半分のコースで十分だった。
港付近にボケーと立っているゴジラ岩も、この虚無感と疲労感を癒してはくれなかった。
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